()||8BGM_Room:グリフィンの司令室にて。
NPC-Helian(0)ヘリアン<通讯框>||8:……端的に言えば、依頼主の希望はグリフィンに窃盗事件を自演してもらうことだ。+よって公の場で「グローリー・スター」を盗み出し、そして秘密裡にその宝石を返すのが今回の任務となる。
NPC-Helian(0)||8:ここまでの話を聞いて私は思わず目を丸くした。//nどうやらへリアンさんも私の心中を察したようだ。
NPC-Helian(0)ヘリアン||8:そうすることで、宝石を着け狙うものがいなくなり、依頼主も静かに晩年を過ごせるようになる、ということだろう。
NPC-Helian(0)||8:依頼主のプロフィールにはいくつか改ざんの跡が見られたが、それでも私はその者の正体に気づいていた。+恐らくは、コーラップス災害から逃れ、第三次世界大戦からも生き延びたあの老婦人なのだろう。+夫から莫大な財産を受け継ぎ、さらにその天賦の投資センスと稀に見る強運で、今の富豪ランキングのトップにまで登り詰めた有名人だ。+依頼の対象となった宝石も、その大きすぎるサイズが故に、指輪やネックレスなどのアクセサリーに使うことができないものだ。それを守るために正体を隠してまでこんな茶番を依頼してくるとは、金持ちにも金持ちなりの苦労があるということなのだろうか……
NPC-Helian(0)ヘリアン||8:今回の作戦は、依頼主の八十歳の誕生日に実施する予定だ。目標の宝石は、当日の誕生パーティーで展示される。+時間は来週……ちょうど、我が社のアニバーサリーパーティーと同じ日だ。
NPC-Helian(0)指揮官||8:ではアニバーサリーパーティーの件は……
NPC-Helian(0)ヘリアン||8:予定通りに行われる。今回の作戦は残業として扱われ、特別ボーナスが付くだろう。+それから、本部から派遣される人形二名も今回の作戦に参加する。宝石の移送もその二人が行う予定だ。+芝居の内容については、全て貴官に任せよう。
NPC-Helian(0)指揮官||8:その二人の人形と事前に打ち合わせする必要はありますか?
NPC-Helian(0)ヘリアン||8:必要ない。彼女たちは独自に任務を実行する手筈になっている。貴官はただ、疑われないように窃盗事件を演じてくれるだけでいい。+急な残業で済まないが、これも会社に信頼されている証だと思ってくれ。
()||8:……通信終了。+特別ボーナスがあるとはいえ、これでアニバーサリーパーティーを逃しまうのは少し惜しい気がする。+しかも、この私の一生分の給料よりもずっと高い宝石を「消えさせる」ことも、そう簡単ではないだろう。
指挥官()指揮官||8<黑点1>:まったく……面倒な石ころめ……
()||139BGM_Empty<黑点2>:一週間後。+パーティー会場にて。
UMP9(6)UMP9||139BGM_Moon:もしもし?45姉?準備できた?じゃあ今すぐいくね。
UMP9(6)UMP9||139:そろそろ始まるみたいだね、もう行かないと。
UMP9(6)指揮官||139:ああ、そろそろ作戦開始だね。+……埋め合わせとして、来年のパーティーは思いっきり楽しもうか。
UMP9(6)UMP9||139:へへっ……その言葉を待ってたよ、指揮官。
UMP9(6)||139RunStep:UMP9は嬉しそうにスキップしながら、パーティーの人込みの中に消えた。
()||139:それから暫くして、ちょうど喉が渇いて隣のウェイトレス人形からマティーニを貰おうとした時、背後から低い女性の声が聞こえた。
???()???||139:「不幸を届けに来た」
指挥官()指揮官||139:……+「残念」+「女にやさしくするのが私のモットーだ」
()||139:私が振り返る前に、声の主は私の前に現れた。
UMP45(4)||139:UMP9とはまるで合わせ鏡のような姿に、微かに不吉を感じる笑みを交えて……
UMP45(4)UMP45||139:あら、まだそれを覚えていたなんて。+指揮官、もしかしてこっそりメモを残したの?
UMP45(4)指揮官||139:まさか、忘れるわけがないでしょ。もし君たちがいなかったら、あの時……
UMP45(4)UMP45||139:はい、ストップ。秘密は秘密のままに。+私のことを覚えていてくれてるのなら、それで十分よ。
UMP45(4)指揮官||139:あれから暫く見なかったけど、また何かの任務に駆り出されていたの?
UMP45(4)UMP45||139:それは私を試しているのかしら?
UMP45(4)指揮官||139:……+まぁいい、他の話をしよう。+今日のその恰好はどういう趣向なの?
UMP45(4)UMP45||139:あなたが言っているのは……これのこと?
UMP45(4)||139:妹と違い、UMP45が身に着けているのは深紫のドレスだった。+彼女の身長や外見に合わせて、腰に大きなリボンがついているが、それでもこの服を着た人形から溢れ出す大人の雰囲気を抑えることはできない。
UMP45(4)UMP45||139:特に何も……依頼主のクローゼットから適当に選んだの、9と同じよ。
UMP45(4)指揮官||139:姉妹でも、センスは全然違うんだね。
UMP45(4)UMP45||139:まだ何回も会ってないのに、もう私のセンスを分かってるつもりなの?
UMP45(4)指揮官||139:それもそうだね……+もう少し、君たちと長くいられたらいいんだけど。
UMP45(4)UMP45||139:あまり長く一緒にい過ぎると、さよならを言うのが面倒になるわよ。
UMP45(4)||139:UMP45は少し目を逸らした。
UMP45(4)UMP45||139:私の世界はここじゃないから。
UMP45(4)指揮官||139:…………
UMP45(4)||139:その視線の先は、窓の外のずっと遠くにある気がした。+もしかして、彼女は早くこの話を終わらせて、さっさとこの場なら離れたいのだろうか?+私には分からない。しかし、このまま終わりたくもない。
UMP45(4)指揮官||139:……こういう雰囲気は嫌いなの?
UMP45(4)UMP45||139:と言うより……羨ましいのかもしれないわね。
UMP45(4)指揮官||139:なら溶け込んでみたらどう?場の雰囲気に合わせるのも大事だよ。
UMP45(4)UMP45||139:溶け込む……?
UMP45(4)指揮官||139:そ、今回だけでもね。
UMP45(4)UMP45||139:……
UMP45(4)||139:……ピッ。
UMP45(4)||139:UMP45は急に何回か瞬きして、視線を私に戻した。
UMP45(4)UMP45||139:ごめん、指揮官。今回はダメみたい。
UMP45(4)指揮官||139:仕方ないよ……次はもっと早く誘うことにするね。
UMP45(4)UMP45||139:次?+そっか、次か……
UMP45(4)指揮官||139:そんなに先のことではないと思うよ。
UMP45(4)UMP45||139:そんなに長く続かないとも思うけど。
UMP45(4)||139<黑屏1>:そのまま、彼女は振り返って、静かにパーティーの人込みの中へと消えた。
()||97<黑屏2>BGM_Empty:……数時間後。+パーティーの混乱は収まり、ゲストたちはグリフィン人形たちの引率のもと、順番に避難を始めた。
()||97:見たところ、彼らはそんなに慌てる様子もなく、むしろ今夜のこの奇妙な出来事を目の当たりにした感想を騒がしく話し合っていた。+私はゲストたちとは逆の方向にある、誰もいない屋敷の奥に向かった。
UMP45(4)UMP45||97:指揮官、私のことを待ってたの?9にはもう会った?
UMP45(4)指揮官||97:次はそんなに先のことではないって言ったでしょ。+それで、後始末の方はもう済んだの?
UMP45(4)||97:UMP45はドレスの裾を上げて、太ももの内側につけていた透明の容器を見せてくれた。+強化ガラスであろうと、その宝石の輝きを完全に遮断することはできないようだ。
UMP45(4)UMP45||97:ご要望通り、宝石は依頼主に返還いたします、どうか安心を。
UMP45(4)指揮官||97:任務を完遂したのなら、もっと嬉しそうにしたっていいのに。
UMP45(4)UMP45||97BGM_Wake:ふふ、それは鬱病の人にもっと明るくなって欲しいとか、足が骨折した人にもっと外で歩こうみたいな意味?
UMP45(4)指揮官||97:そういう気の利いた存在だと自負しているけどね。
UMP45(4)UMP45||97:申し訳ないけど、どんなに私に良くしたところで、何も出ないわ。
UMP45(4)指揮官||97:「女性にやさしくするのが私のモットーだよ」。
UMP45(4)UMP45||97:一応言うけど、作戦はもう終わってるわよ、指揮官。
UMP45(4)指揮官||97:これを座右の銘にしちゃダメかな、できるなら自分のお墓に刻んでやりたいくらいだけど。
UMP45(4)UMP45||97:ははは、そんなものをお墓に刻みたいだなんて、どんな死に方をするつもりなの?+それに、私にそうしたところで何にもならないって言っているのに、どうして私に構うわけ?
UMP45(4)指揮官||97:UMP9が楽しそうにしていたからね。君にも同じように、今夜を楽しんで欲しいんだ。
UMP45(4)UMP45||97:楽しむ?
UMP45(4)指揮官||97:そう。貴重な休日を使って、何一つ楽しめることがないようじゃ、さすがに悲しいでしょ?
UMP45(4)UMP45||97:……+ただそれだけのために?
UMP45(4)指揮官||97:そうだよ。+グリフィンの取り決めでは、人形は任務と任務の間に休暇を設けることができる。+肩の力を抜きたいなら、もうちょっと休んでみてもいいんじゃない?
UMP45(4)UMP45||97:……+それは、無理かもしれないわね……+だってずっと忙しいし。
UMP45(4)指揮官||97:どうせいつものような任務でしょ?
UMP45(4)UMP45||97:スケジュールが分からないし、はっきり答えることもできないわ……+……当然、ありがとうも言えない。
UMP45(4)指揮官||97:そうなんだ……+だけど、同じグリフィンに休暇を奪われた者同士、もう少し仲良くしてもいいと思うけどね。+来年のパーティーはどんな任務も全部断って、経費で思いっきり楽しむつもりだよ、私は。//n今年の残業の埋め合わせにね。+一緒どう、UMP45?
UMP45(4)UMP45||97:……+指揮官……+本当に何も知らないの?
UMP45(4)指揮官||97:君は……+……私に知ってほしいの?
UMP45(4)UMP45||97:いえ……+このままでいい……
UMP45(4)||97:UMP45は何歩か下がった。
UMP45(4)UMP45||97:……このままがいいわ。+じゃあ、そろそろ行くね。
UMP45(4)指揮官||97:他に用事があるの?
UMP45(4)UMP45||97:言ったはずよ、そう長く続かないって。
UMP45(4)指揮官||97:じゃあ次の次は?+さっきも言ったけど……
UMP45(4)UMP45||97:……
UMP45(4)||97:UMP45は振り返って、傷跡のついた目で少し私を見つめた。
UMP45(4)UMP45||97:考えておくわ……+次はもう少し溶け込んで……
UMP45(4)UMP45||97<黑屏1>:もう少し、長く……
()||9RunStep<黑屏2>:彼女が行ってしまった後、私はようやく気付くことができた。あれは多分、笑顔だったのだ。
()||9:彼女の笑顔に一体どれぐらい本物の感情が宿っているのかは、私には分からない。+ただ彼女が行った時の足音は、いつものように静かではなかった。//nヒールの踵が大理石の地面を叩く、その綺麗な音色がいつまでも屋敷の中を漂っている……
()||9<黑屏1>:次に耳にするこの音色が、段々と近づいてくる音であることを願う。